レース前日の金曜日は、耐久レースに出る人たちの公式練習が行われた。ST600の4人は朝8時には筑波入り・・・したわけではない。 走行時間が遅い平○さんは、カノジョのガミちゃんと一緒に同伴出勤。余裕の10時集合だ。オレ様はいつもマイペースである。
平○さんとガミちゃんはじめ、アオヤマさんちのお歴々は今、あっちもこっちも花盛り。
ということで今回は、筑波に咲く恋の話と、いこうじゃないか。
モトパチくんのカノジョ、通称「エルメス」は清楚で美人な、実に素敵なお嬢さんである。 レースが終わって、片づけの時、誰が指図するわけでもなく、すっとでてきてほうきであたりを掃いているエルメスを見た、ツナギが大きいほらげっちは、そのエルメスの姿をうっとりと眺めていた。
「いいねぇ〜・・・エルメス・・・」
そして、となりにいたあたくしを横目でちらっと見てため息をついたのをあたくしが見逃すはずはない。実におおきなお世話である。
「それにしてもエルメスといいガミちゃんといい、もっといい男がいるだろうにねぇ・・・なんだってまた・・・」
ぼそっと言った、ツナギが大きいほらげっちのこの台詞を、平○さんとモトパチくんにはあとでこそっと教えてやろう。ツナギが大きいほらげっちは早晩、袋だたきだ。あたくしは速攻でネタ帳にメモをとった。
おっと、恋の話だったな。
さて、そのエルメスは、ライダーとして走るモトパチくんのために金曜の仕事を終えると、電車を乗り継いでやってきた。ひとり降り立つ無人の石下駅、そこに待つのは大事な飲み会ミーティングを抜け出して迎えにきたモトパチくん。 これがクリスマスの夜だったり、筑波エクスプレスではなく成田エクスプレスだったりしたら、ロマンチックもひとしおなのだが、まぁ、ここは二人の愛のために目をつぶろう。
そもそも、モトパチくんは今回のレースで一番忙しい男である。 スーパーメカニック師匠のうえ爺がくるっていっても、来るのは所詮前日のこと。それまで3台のマシンを見て、かつ走行練習もこなさなくてはならない。 レースの前数週間は、おそらくずっと、寝るヒマもなかったはずだ・・・。
土日が休みの丸の内OL、エルメス。モトパチくんと一緒に休みを取ってドライブ・・・そんな甘い夢をみることもエルメスには許されなかった数週間。
「でも・・・」
エルメスは言った
「でも、『レースをやっていることに誇りを感じている、どんなに忙しくても、好きなことだから全然辛くない』って、言うんです」
なにお〜っ?! ちっ・・・モトパチめ・・・エルメスの前だからってかっこつけやがって・・・
このモトパチくんの台詞を、あとでてんちょ〜にこそっと教えてやろう。これでヤツにクリスマスがくることはない。あたくしは、速攻でネタ帳にメモをとった。
いや、あたくし、べつに、人の恋路を邪魔してるつもりは全然ないんですよ。はい。
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